鼓膜の奥にある、中耳腔という場所に液体がたまる病気です。難聴の原因となり、将来的に癒着性中耳炎や真珠腫性中耳炎に移行する危険性があります。滲出性中耳炎は、鼻と中耳腔をつなぐ耳管という管の機能不全と、中耳腔の感染症である急性中耳炎がその原因で、アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、扁桃やアデノイドの肥大などがその要因となります。
まず試して見る価値のある治療は、小児副鼻腔炎で紹介したマクロライドという抗生物質の少量長期投与や抗アレルギー剤などの内服と、週に最低2回外来で鼻の掃除をやり、鼻汁が少なくなってきたら鼻から中耳腔に空気を通す治療とを同時に行うことです。慢性副鼻腔炎がなくてもマクロライドの少量長期投与は滲出性中耳炎にも非常によく効きます。 上記治療でも3,4ヶ月以上改善がみられない場合や、難聴が高度な場合(当院では平均聴力が30dB以上低下しているものを対象にしています。)、鼓膜の状態が視診上悪い場合あるいは通院が頻回にできない場合には、鼓膜切開という治療があります。鼓膜に小さい穴を開け、中の貯留液を直接吸い取るという治療法です。穴は概ね1週間以内で自然に塞がり、1回の鼓膜切開で滲出性中耳炎が治癒してしまうこともよくあります。鼓膜切開は麻酔に20分程要しますが外来で当日実施できます。費用は保険3割負担で2000円強です。 鼓膜切開を片耳2,3回以上行う必要がある場合、あるいは通院が頻回にできない場合には、鼓膜にチューブを留置するという方法があります。常に鼓膜に穴があいた状態が続きますので、施行後は耳に水が入らないように気をつける必要があります。また、水泳に関してしっかりした耳栓を付けることや飛び込み、潜水ができないなどの制限が生じます。鼻の状態がよければ月に1回程度の通院で済む様になります。チューブは自然に脱落することもありますが、約2年後に抜去します。外来で出来るかどうかは子供さん自身の協力によるところが大きいです。この治療は鼓膜切開と比べ鼓膜に穴の空いている期間が長いので、稀に開けた穴が塞がらなくなる事があります。マクロライドの少量長期投与を行うようになってからは、この治療法を選択するに到る患者さんは激減しています。 |